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東京高等裁判所 昭和24年(新を)728号 判決 1950年6月26日

被告人

森田光孝

外二名

主文

本件各控訴をいずれも棄却する。

訴訟費用は、これを三分しその一を各被告人において負担する。

理由

弁護人松井久市の第一点について。

原審の昭和二十四年四月十九日の公判期日の召喚状が被告人三名に適式に送還されているかどうかを記録にもとずいて調べてみるに、被告人杉田静吉が代表として同年三月二十五日附で公判期日請書を提出しているだけで、同被告人以外の二名は同様の書面を提出していず、又これらに対しその他の召喚手続を採つた跡も見受けられない。数人の弁護人のある場合における主任弁護人の権限に関する刑事訴訟規則第二五条第一項のような規定があれば格別、数人の被告人の場合につき、通知又は書類の送達に関し、これと同様の取扱いを認めることはできない。だから、たとえ被告人杉田静吉が被告人三名の代表として右公判期日請書を提出していても、被告人杉田静吉以外の他二名の被告人に対して適式な召喚手続を履践したものと云うことはできない。しかし記録を更に調べてみると、他二名の被告人は被告人杉田静吉と共に昭和二十四年四月十九日の公判期日に出頭して終始審理を受けており、しかも被告人等並に弁護人からも右の点につき何等の異議を留めていないのである。してみれば、右他二名の被告人は責問権を放棄したものとみる外ないのであつて、これによつて右違法はおのずから治癒されたものと云うべきである。従つて、右違法を理由として原審の右公判期日における手続を違法とする論旨は、もとより採用するわけにはいかぬ。論旨は理由がない。

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